06/08/30(水) 自作チヂミ失敗作

 
 
 
 
【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
 
【昼メニュー】
カレーライス(立ち食いソバ屋)
 
【夜メニュー】
自作チヂミ(キュウリ、ツナ)
いなり寿司
長芋とキムチの韓国風ソース和え
プチトマト
ビール
 
 
相方がチヂミを作りたいと言ってきた。チヂミの粉を買うのではなく、生地もタレも一から作るというチャレンジメニューだ。どうやら彼女はチヂミについてネットで色々調べたらしく、中でもニラの代わりにキュウリを入れたさっぱりチヂミなるものに心を打たれたようである。「キュウリのシャキシャキ感がたまらない」という好意的な書き込みが続くそのページを参考に、相方はいつもと違うチヂミ作成に取り掛かったのだった。
 
タレについては何も問題ない。相方は以前何度もチヂミのタレを作っており、その出来栄えは市販品に引けを取らないと既に承知しているからだ。ならば生地は?そう思っている矢先、相方がどうみても不吉な声で僕を呼ぶ。見ればそこには、小麦粉に小さく刻んだキュウリを混ぜたドロドロの生地が、フライパン狭しと広がっていた。
 
「なんか全然硬くな~い、超柔らか~い!」
「柔らかいチヂミもまたオツだ、大丈夫!」
「あ!くっついちゃったくっついちゃった!どうしよ!」
「き、傷は浅い、大丈夫だ…」
「あ!こげちゃったどうしよ!」
「だ、大丈夫、おこげは美味しいものなんだ…」
「ふーう、出来た…」
「こ…これは…」
 
それは、チヂミという名の一種の幻だったのかもしれない。刻んだキュウリの水分がさらに加わり、まるで力士のように跳ねる物体。だけど確かにそれはチヂミのはずで、だけどそれでも僕等は未知の宇宙に踏み込んだ気分にきっと陥ったんだと思う。
 
「う…マズい…」
「い、いや…マズいわけじゃないんだ、マズいわけじゃ…ただ、僕はこういう経験は初めてだから気が動転して…」
 
正式に失敗を表明する相方に、さすがに言葉を持つことが出来ない僕。二枚目を作ることなく、余った生地を使ってもんじゃ焼きに強引に変更した事実だけがそこに存在している。これは、もしかして失敗作というヤツだろうか…。恐る恐る相方の顔を見るしかない僕だった。
 
だが、失敗は成功の母。滅多に無いことだけど、たまにはこういうこともある。逆になければ、成長はそこで止まってしまう。ならば今回のことは好意的に受け止めるべきだろう。それに相方も、以前のように僕に八つ当たりパンチをすることもなく、冷静に失敗要因を分析していた。これは、かつての彼女から考えれば目を見張るべき成長ぶりだ。
 
驕ることなく、かと言って拗ねることなく、その時その時の現実を淡々と受け止める。そして次に繋げる。こうして人の歴史は作られてきたのだから…。
 
というわけでチヂミよ、また会おう。次は普通のチヂミの姿で。

06/08/29(火) ソーメン、生姜焼き

 
 
【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
 
【昼メニュー】
自作オニギリ
 
【夜メニュー】
ソーメン
生姜トマト焼き
ビール
 
 
ソーメンは太らない。それは持論であり伝聞論であり経験論でもあった。
だが、ソーメンは炭水化物。その観点から行けば太る可能性もなくはない。しかも世間では案外支持されている模様。新説であった。
 
真相はどうあれ、ダイエットを基調として生活している僕としては、この思わぬ伏兵の存在は見逃せない。再度注目し、よく精査すべきだろう。そう思っている矢先、無性にソーメンが食いたくなったわけだ。どうしたものか…。僕はとりあえず、相方に「何とかしろ」とだけ言い含めてマンガを読み始めた。
 
数十分後、テーブルに置かれたのはいつものソーメン、揖保乃糸。だが、今回はそこに生姜焼きが加わっている。そういえば数日前、僕が伝聞によって得た情報を相方に伝えて曰く、「ソーメンと豚を食べると痩せるらしいよ」。裏を取った相方が本日、僕に曰く、「豚肉は炭水化物の代謝を促進するビタミンB1が多く含まれてます」。ソーメンは炭水化物、即ち糖質。そして糖質をさっさと分解する能力が豚にはある?だとすれば、豚はソーメン愛好家にとっての最終兵器。まったく食事道は奥が深い…。
 
アブラムシは、アリに自らの分泌物を与える代わりに天敵から身を守ってもらうという。生き残るために、自らの有用性を主張しているのだ。だとしたら豚も同じように、ソーメンとセットで食卓に並べてもらえるように、自らの糖質消化能力を主張しているのだろうか…。一人より二人、孤立より共生。アメとムチの食卓縮図がここにある。
 
そんな、生き残りをかけた能力主張合戦。サバイバルを左右するのは、各食材に含まれる特殊能力。その淘汰と共生の変遷の結果、ソーメンと豚肉が現在まで残っているのだとすれば、これほどの感動物語も他に無い。そんな物語のキャスト達に拍手を送りながら、僕は糖質の心配をすることなくソーメンをズズズとすすったのだった。
 
でも糖質はいいけど塩分は?まあいずれ解決する日も来よう。とりあえず今はソーメンと生姜焼きが旨くてほっぺた落ちてる最中。

06/08/28(月) とんかつ屋、シガーバー

 
 
 
 
 
 
【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
 
【昼メニュー】
自作オニギリ
 
【夜メニュー】
とんかつ:東京丸の内「たづむら」
シガーバー:東京丸の内「ル・コネスール丸の内店」
 
 
「シガーバー行こうぜ」
しがないババア?なにそれ?」
「いやそうじゃなくて…」
「シガーバーって旨い?」
「いやそうじゃなくて…」
  
バー。ちょっとお洒落な洋風酒場。カウンターで独り斜に構えたい人間や、窓際のソファーに深々と腰掛けブランデー片手に気取ってみたい連中が集う、一種の擬似セレブ空間である。日々上司に虐げられ惨めな思いをしていようが、世の中に絶望して気力を喪失していようが、そこに行けば上品で活力ある自分を見出すことが出来る。バーは自分を洗練するためだけでなく、折れそうな心を再奮起させる貴重な空間だった。
 
そんな世間のバー事情。シガーバーになると、さらに葉巻が加わる…。南米では日常嗜好品だが、日本に輸入されるや否や高級嗜好品へと昇格する不思議アイテム・葉巻。この高級葉巻をゆっくりとふかしつつ、これまた高級な洋酒をチビチビと飲んで悦に入る場所が即ちシガーバーというところなのである。常日頃から社会に唾する僕等だけど、たまにはハイクラスな一時を楽しむ機会があってもいい。見栄と本音を使い分けるのが大人というものなのだから…。
 
というわけで、僕個人では初となるシガーバーへと赴いた。場所は東京丸の内にある、一泊2万数千円するといわれる高級ホテルのロビー内。見栄を張るためだけに建てられたとしか言いようがない…。そこで上品なマスターの薀蓄を聞きながら各自葉巻を購入。価格は一番安い葉巻で一本1000円、高いものだと1万円に届く勢い。目まいがする…。当然買うのは安いヤツ。それでも、火をつけてふかした瞬間、えもいわれぬ優越感に包まれるのだった。
 
僕のような一般サラリーマンにとって、こういう高級なところは滅多に来れるものではない。だからその雰囲気を存分に楽しみたいと思うのは当然の心理だ。金は有限、そして微少なのだから…。よって、一杯1200円のウイスキーや1500円のドライフルーツを口に入れる度に、持てる優越感を最大限に振りまくわけである。さらに口元には葉巻を加え、眼下には大都会の夜景が広がっているのだから鬼に金棒。あとは膝にネコを乗せてガウンを羽織れば完璧…。いずれにしても、気分とは形から入るものだとつくづく実感した夜だった。
 
週の初っ端から高級夜酒を貫き通し、魔界に入り込んだあの夜。魔界から現世に舞い戻り、カメを撫でながらオーザックをパリパリ食った時の安堵感。僕はこの日を忘れない。

06/08/27(日) うな重

  
 
 
【朝メニュー】
菓子パン
コーヒー牛乳
 
【昼メニュー】
なし
 
【夜メニュー】
うな重
味噌汁(みょうが)
納豆
ビール
 
 
深夜2時半頃。家から20mほど離れた路地からいきなり女性の悲鳴が聞こえたわけで。「グアァーッ!ギャーッ!ウアーッ!」という感じで、まさしく阿鼻叫喚という形容が相応しい叫び声だったのだが、その叫び声のボリュームの大きさと、まるで人生最大の恐怖に遭遇したかのような声質から、これはもう重大な事態だと悟ったものだ。風呂に入っていた相方ですら恐怖した。
 
で、僕はどうしたのかというと、20秒ほど息を殺して間を置いた後、少しだけ窓を開けて外を状況を覗き見たのみ。そしてただただ状況を観察するのみ。決して外に出ることは無かった。何故かと言うと、巻き込まれるのが嫌だったから。それが本音だ。
 
自分に出来た選択肢は多分、2つあった。一つ目は、声が聞こえた瞬間外に飛び出し、女性を襲っている変態を完膚なきまでに叩きのめして彼女を救出すること。もう一つは静観、傍観、無関心、消極的協力…。前者を行えば犯罪者を捕らえることが出来、感謝もされる、いわばグッドエンディング。後者はただ犯罪者だけが満足するだけのバッドエンディング。だが、僕がバッドエンディングへとひた走る。
 
今の僕はタフガイではない。相手は深夜にコソコソと動き回る程度のショボイ人間だが、衰え切った今の僕が取り押さえれるかは甚だ不明。反撃されて怪我でもしたらそれこそ無駄死に。自分の力量を弁えず、ただ向かっていく輩は真の勇気を知らない人間。それはノミと同類。真の勇気は己を知った上にのみ成り立つ。それに、刺されでもしたら相方も悲しむだろうし。よって、僕の行動はまるっきり正しいということになる。
 
その証拠に、あれだけ騒いでいたのにも関わらず、1分程経っても誰も出てこない。その後一番最初に出てきたのは、身長180cmはあろうかという男二人で、開口一番「何かあったんですか?」。見た目は屈強そうなツインタワーをしてもこの程度である。誰だって見知らぬ敵と対峙するのは怖いし、夜は怖いのだ。ならば僕など言わずもがな。その10mほど先、棒を右手に持って恐る恐る様子を眺めていた爺さんがいた。彼はそのひ弱な身体で、なけなしの勇気を振り絞ったに違いないのだ。
 
要するに、自分に近しい人でもない限り、またはこちらが完全に優勢だと確信できない限り、緊急事態に助けを求めるのは難しい。ヘタをすればただ、野次馬にさらされるだけだ。冷たい現実、だけど仕方ない現実、その一端を垣間見た一日だった。
 
それと同じように、体重が増えたのはまぎれもない現実。それを何とかしようにも、根本のところでは誰も助けてくれないのも現実。危険を予測しそれを回避する大切さ。決して物事を舐めないことの重要さ。強い意志を持たねばならないという教訓が溢れる一日。
 
その事件は、一応何事も無く、犯人が走り逃げて終わった。
うな重はこってりと旨かった。

06/08/26(土) 自作サンド、ラタトゥイユ豆腐焼き

 
 
 
 
 
 
【朝メニュー】
自作サンドイッチ(キュウリ、トマト、レタス、キャベツ、タマゴ、ツナ、ササミチーズ揚げ)
カレーパン、ベーグル
ビール
 
【昼メニュー】
なし
 
【夜メニュー】
ラタトゥイユの豆腐焼き
刺身
枝豆
納豆
キュウリ、ナスのぬか漬け
ビール
 
 
自作サンドにカレーパン等々…。カロリー多目でも、マヨネーズを無尽蔵にぶっかけても土曜日だから許される。まして、僕の自作サンドは既に神の領域。なおさら許される。朝っぱらから欲望の赴くままに、僕等は久々の自作サンドを楽しむのだった。
 
そんな時、ふと思った、キャベツとレタスの勢力関係。たとえば揚げ物の添え物でも、カレーライスのサラダとしてでも、大抵のメニューではキャベツが圧倒的に脚光を浴びている。それに比べれば、レタスは哀れなほどに日の目を見ない…。
 
しかし、サンドイッチとなるとそれが逆転する。トマト、キュウリは定番だとしても、その他サンドイッチに挟む野菜をと問われれば、十中八九レタスを挙げるに違いない。普段は蔑ろにされがちなレタスが、サンドイッチという局地戦になった途端に不滅の英雄として扱われるのだ。いつもキャベツに主役の座を持っていかれているレタスにとって、この瞬間だけは一矢報いれた気持ちでいっぱいだろう。僕はそんなレタスに心より敬礼する。
 
まあ、サンドイッチの中でも、揚げ物を挟んでソースをかける際には、その下に敷くのはレタスでなくてキャベツという辛い現実も一方ではある。まさしく局地のなかの局地。一瞬の花を咲かせた後は、次の栄光を座して待つのみなのだから…。でも、だからこそその一瞬の輝きを大切にしたい。時にはレタスを食いたい、そう思う瞬間こそが好意に値するよ…。
 
あとは、先日好評だったラタトゥイユを豆腐焼きにぶっかけた料理が印象的。ダイエットという至上義務の中、日々工夫を凝らしたメニューを作ろうと頑張っている相方は好意に値するよ…。
 
もちろん僕は食うだけ。

06/08/25(金) 味噌煮込みうどん

 
 
【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
 
【昼メニュー】
自作オニギリ
 
【夜メニュー】
味噌煮込みうどん(シャケ、タマゴ、ナス、油揚げ、ネギ等)
ビール
 
 
食材を買い過ぎダメにしてしまうことは良くある。大体はその食材を手に取った瞬間に分かっている。「・・・これって余計じゃね?」と。そこで踏み止まり、商品を陳列棚に戻せばそれでいい。だが、「もしや足りないかも」という甘い予想や、「どうせ別の日に食うさ」という楽観的なシミュレーションがその決断を鈍らせる。そしてIFの世界を信じながら、人は日々余計な衝動買いに明け暮れるのだった。
 
少しベクトルはずれるが、今回の味噌煮込みうどんもまた、そういう類に含まれるだろう。本来なら味噌煮込み自体を食う機会は数多だが、ダイエット中という要素がその可能性を甚だしく制限するのだ。本当は昨日食べたかった。だけど僕等は減量中だから…。
 
それでも味噌煮込みうどんは、そこいらの衝動買い食品とはわけが違う。月に一度あるかないかのイベント商品。僕が名古屋で汗水垂らしてようやく手に入れる珠玉の一品なのだ。それを捨てるなど食の神に背く行為。いくら卑劣漢と呼ばれようと、それだけは出来ない…。
 
そこで出たのが妥協案。休日を控えた金曜日ならば、多少タガを外たとしても何となく許せてしまう。そんな人間心理に正当性を見出しつつ、僕等がボリューム満点の味噌煮込みうどんに熱狂するのだ。その時の背徳感と達成感がたまらない。抑圧していればしているほど、反動の炎もまた燃え上がるのだから。アツいね…アツいよ…。うおっ、汁が熱ィ!!
 
それにしても、煮込み鍋に入れる肉を何にするかというのは重要じゃないようで重要だ。通常、鶏を入れるところを、今回僕等はシャケを入れた。このシャケがまた旨いのだ。あの儚く崩れ去るピンクの身を箸で摘んだだけで、何か熱いものがこみ上げる。
 
そう、地球は海から始まった。生物は魚から始まった。何もかもが海から始まり、全てが終わった時、きっと僕等は母なる海へ還るのだ。
 
宇宙船地球号の壮大な歴史を体現する魚。その中で今も活発にその存在感を主張するシャケがいとおしくてたまらない。

06/08/24(木) ソーメン

 
 
 
【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
 
【昼メニュー】
自作オニギリ
 
【夜メニュー】
ソーメン
キムチ
納豆
ビール
 
 
ダイエット宣言した手前、暴飲暴食はもう出来ない。それどころか、最初掲げたダイエットスケジュールも日を追うごとに詳細に、本格的に変貌を遂げつつある。今ではジュース類は全く飲まず、もっぱら麦茶で済ます方向。さらに食事制限だけでは心許ないと始めた腹筋・背筋・腕立て伏せの黄金三種でもまだ足りないからと、近所のスポーツジムで行われる1ヶ月3150円に突入することがほぼ確定していた。これなら痩せれる、さすがに…。
 
そういうわけで、夕飯が質素になるのは予定通り。土曜にはまた実家から野菜が到着するため、買い物することなくあり合わせのもので済ませたい。現在、家に残っているのは名古屋土産の味噌煮込みうどんとソーメンだが、味噌煮込みうどんは腹が膨れるし食うのにも気合が要るため、基本的には後顧の憂いの無くなった週末に食べるべし。だから木曜という中途半端な日に相応しいのは、ソーメン以外に有り得ない。余力を残すため、そして痩せるために…。このようにして、まったく妥当なことこの上ないソーメン案が採決されたのだった。
 
ソーメンは炭水化物だ、一応。しかしソーメンで太ったなどという話は聞いたことも無いし、むしろ痩せるきっかけとしてよくその名を耳にするのではなかろうか?それもそのはず。ソーメンの構成物は小麦粉、塩、水。ただ小麦粉を塩水でコネコネするだけなのだ。こんなことでは太る方がどうかしているというもの…。
 
そういうわけで、ソーメンという夏の特番メニューに改めて注目し直してみた次第。安い、旨い、太らないの三拍子揃ったこのメニューはまったく使える。

06/08/23(水) マーボナス

 
 
【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
 
【昼メニュー】
自作オニギリ
 
【夜メニュー】
ご飯
味噌汁
マーボナス
豆腐とトマトのみょうがドレッシング和え
キムチ
納豆
ビール
 
 
夜はマーボナスを依頼してみたのだが、これがまた旨そうな。相方の料理技術も随分と様になっており、参謀長としては全く以って嬉しい限りである…。ていうかウマッ!ヤベッ!思わず左手で皿を抱え上げ、息も衝かせぬほど箸で掻き込んでグハァ!喉に唐辛子が入ったゴホォ!
 
彼女はドレッシングにも凝っている。今日作ったのは、豆腐とトマトをみょうがドレッシング和えというヤツだ。中華、イタリアン、そして和風なドレッシング、これら全てを作れるのだとしたら、やはり成長著しい。監査役としては全く以って頼もしい限りである…。活きのいい生豆腐と生トマトにたっぷりとかけられた、みょうが汁という名の興奮剤。いやいやそそるのうヒョホホ。
 
返す返すも相方は頑張っている、努力している。だから僕も頑張らねばならない。だから僕は、出されたものを目一杯食い、その後ゲルマ風呂に入りながら本を読み、その後ストレッチと腕立てと腹筋と背筋を行ったのだ。相方に負けないために。自分に負けないために。
 
食欲、知性、体力の三位一体。全てを網羅する素晴らしい夜のスケジュール。これを続けることが出来れば、僕はきっとクズを脱却できる…。今こそ目覚めよ、覚醒せよ・・・!
 
ハッと目覚めた時、時刻は次の日の朝7時12分になっていた。

06/08/22(火) 棒棒鶏

 
 
 
【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
 
【昼メニュー】
自作オニギリ
 
【夜メニュー】
ご飯
味噌汁
棒棒鶏(バンバンジー)
しらすの大根おろし
ピーマンとかつおぶしの和え物
カボチャ煮込み
納豆
ビール
 
 
「今、バンバンジー作ってるところだよ」
 
台所にてさえずる相方。僕はその響きにドキリとし、だけどその後昔の記憶と共に微笑ましい気分に包まれた。
 
「バンバンジーか。懐かしいな…」
 
それは、一世を風靡したインスタントラーメンの名称。数十年前に見たTVCMが印象的で、当時の人間で知らない者は居ない程だった。だが、出前一丁やチキンラーメン等の強固な壁を崩すことが出来ず、同じく当時の代表格「明星チャルメラ」達と一緒に消えた…。今でも僕は、たまに彼等を思い出す。時代の波に乗り切れずに淘汰された、悲しきインスタントラーメン達に哀愁を込めて…。だから、僕は当然のように言ったのだ。
 
「それにしてもラーメンとは珍しいねぇ」
 
しかし相方から返ってきた反応は、予想だにしないものだった。
 
「はぁ?バンバンジーはラーメンじゃありません」
 
「!?」
 
僕の中でバンバンジーと言えば、鮮烈な記憶を残してくれた、あのインスタントラーメンのバンバンジーしかない。だが相方はそんなものは存在しないと言う。この食い違いは一体どういうこのなのか?僕がどれだけ熱く説明しても、相方の中では「バンバンジーはラーメンじゃない」という常識が出来上がっている。返ってくる言葉はいつも同じだ。こうなったらネットで検索する以外に道はない。すぐにググってやるから待っとれやこのアマ!
 

検索・・・検索・・・検索・・・ヒット・・・
 
「棒棒鶏は、蒸した鶏を水で冷やし、ゴマダレをかけたものです」
 
・・・・・ラーメンはどこですか?
 

「棒棒鶏は、四川料理の代表的な『冷菜』です」
 
・・・・・冷菜ですかそうですか
 
「蒸した鶏を棒で叩いてならすことから、棒棒鶏という名前がつきました」
 
叩いて下さい。僕を棒で叩いて下さい。
 
 
二十数年後に判明した記憶違い。僕の美しい思い出は塵と消え、眼前にあるのはトマトとキュウリに彩られた蒸し鶏という現実だった。ありがとう…。
 
まあ一応、バンバンジータンタンメンというのが今、日清から発売されてはいる模様。だが、僕の記憶の中のバンバンジーとは明らかに異なるため、気休めにもならなかった。そういえば昔、家に住んでいた十数匹のノラネコの名付け親についてよく揉めていた。ネコ達のセンスある名前は全て僕がつけたのに、弟は自分がつけたと言い張るのだ。両者が子供の頃の記憶を頼りに名付け親を主張しているのだ…。どちらが間違っている、それは確実。だけど、どちらもが自分が正しいと言う。この矛盾は決して解決出来ない。両者が自分の記憶を絶対だと信じ込んでいるのだから…。
 
しょせん、子供時代の記憶なんてそんなもの。どんな記憶も都合よくセピア色に塗り替えられているものだ。他人はその裏を取ることが出来ないから、本人はますます増長し、美しい思い出話にも拍車がかかる。だから三歳頃の記憶を鮮明に語り出す芸能人が居たら気をつけろ。それは脳内シナリオ。間違いない。
 
他人は信用出来ない。だけど自分だって過信出来ない。この事実さえ心得ておけば、きっと道を外れることはなく生きていける。

06/08/21(月) 豆腐ステーキ

 
 
【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
 
【昼メニュー】
自作オニギリ
 
【夜メニュー】
ご飯
味噌汁
豆腐ステーキ
崎太軒のシューマイ
梅モロキュウ
キュウリのごま和え
納豆
ビール
 
 
体重がステップアップ的に増量していr現実を受け、先日体脂肪率とか水分率とか色々計れる高機能体重計を購入した。以降、朝起きた時に、帰宅後に、夕食後に、そして寝る前にも体重を計り、数百g~2kgの増減に一喜一憂する有様は、どうみてもダイエットオタクです。何やってんだ俺と自嘲しながら、乗る瞬間はやはり心が躍る。つくづくダイエットオタクです…。
 
まさしくこういう状態を「格好から入る」と言うのだが、お膳立てを整えることによって自分を追い込むように仕向けるのは、弱き人間にとって有効な手段の一つであることは否めまい。僕はハイグレードヘルスメーターの購入によって逃げ場を失い、ダイエットする以外に道は無くなった。これで何も変化がなければその時こそクズの烙印だ。僕はクズじゃない。やってやる…!
 
こうして這い寄るようにダイエット生活に染められていく僕。まずビールは一杯、これは変わらない。その後の焼酎ジュース割りは従来の3杯から1杯に減らした。後は専ら麦茶しか飲まない。これはかなりの効果があるはず…。そんな飲料事情に加え、野菜を減らしたい相方との利害が絡み、ダイエットメニューにも拍車がかる。
 
相方は今夜、キュウリを減らしたかった。よってキュウリを使用した献立がテーブルに並べられたのも必然の出来事だろう。梅を混ぜたモロキュウは、その梅という隠し味がまた何とも言えず憎かった。酢とゴマがキュウリの瑞々しさを最大限に引き立てるキュウリのごま和えもまたナイス。これなら太ることはない。
 
だが、その中でも特に際立ったのが、「豆腐ステーキ」。相方の心の師匠のアドバイスを参考に、カロリーを抑えつつ美味しいメニューということで、これが選び出されたのだ。しかも、そのこんがりと焼け上がったジューシーな豆腐の上には、おくらととろろが乗っているという。これらは結構腹に溜まる食材であることを考えると、かなり見事な知恵である…。そして実際食ってみた時、肉のステーキに勝るとも劣らない素敵な味わいが広がったことに、僕は感動を覚えたのだった。
 
そのように、多方面からの配慮にも堪えうるメニュー・豆腐ステーキの真骨頂。
見た目の豪華さ、しかし中身の素朴さ。
得られる満腹感、だけど得られないカロリー。

それに味が上々とくるのだから、これほど出来すぎなメニューも他に無い。
 
これならやれる、すぐに痩せれる。僕はクズじゃない。