【朝メニュー】
ヨーグルト
牛乳
【昼メニュー】
カレーライス(立ち食いソバ屋)
【夜メニュー】
自作チヂミ(キュウリ、ツナ)
いなり寿司
長芋とキムチの韓国風ソース和え
プチトマト
ビール
相方がチヂミを作りたいと言ってきた。チヂミの粉を買うのではなく、生地もタレも一から作るというチャレンジメニューだ。どうやら彼女はチヂミについてネットで色々調べたらしく、中でもニラの代わりにキュウリを入れたさっぱりチヂミなるものに心を打たれたようである。「キュウリのシャキシャキ感がたまらない」という好意的な書き込みが続くそのページを参考に、相方はいつもと違うチヂミ作成に取り掛かったのだった。
タレについては何も問題ない。相方は以前何度もチヂミのタレを作っており、その出来栄えは市販品に引けを取らないと既に承知しているからだ。ならば生地は?そう思っている矢先、相方がどうみても不吉な声で僕を呼ぶ。見ればそこには、小麦粉に小さく刻んだキュウリを混ぜたドロドロの生地が、フライパン狭しと広がっていた。
「なんか全然硬くな~い、超柔らか~い!」
「柔らかいチヂミもまたオツだ、大丈夫!」
「あ!くっついちゃったくっついちゃった!どうしよ!」
「き、傷は浅い、大丈夫だ…」
「あ!こげちゃったどうしよ!」
「だ、大丈夫、おこげは美味しいものなんだ…」
「ふーう、出来た…」
「こ…これは…」
それは、チヂミという名の一種の幻だったのかもしれない。刻んだキュウリの水分がさらに加わり、まるで力士のように跳ねる物体。だけど確かにそれはチヂミのはずで、だけどそれでも僕等は未知の宇宙に踏み込んだ気分にきっと陥ったんだと思う。
「う…マズい…」
「い、いや…マズいわけじゃないんだ、マズいわけじゃ…ただ、僕はこういう経験は初めてだから気が動転して…」
正式に失敗を表明する相方に、さすがに言葉を持つことが出来ない僕。二枚目を作ることなく、余った生地を使ってもんじゃ焼きに強引に変更した事実だけがそこに存在している。これは、もしかして失敗作というヤツだろうか…。恐る恐る相方の顔を見るしかない僕だった。
だが、失敗は成功の母。滅多に無いことだけど、たまにはこういうこともある。逆になければ、成長はそこで止まってしまう。ならば今回のことは好意的に受け止めるべきだろう。それに相方も、以前のように僕に八つ当たりパンチをすることもなく、冷静に失敗要因を分析していた。これは、かつての彼女から考えれば目を見張るべき成長ぶりだ。
驕ることなく、かと言って拗ねることなく、その時その時の現実を淡々と受け止める。そして次に繋げる。こうして人の歴史は作られてきたのだから…。
というわけでチヂミよ、また会おう。次は普通のチヂミの姿で。